切り花
リリー

 冷たすぎない 水の入った硝子の花びん
 丸くしぼんで頭を垂れた
 二本のガーベラが生けられる

 それは夏の日、
 駐輪場の傍道に
 ビニール包装されたまま
 三百円の値札を付けた 落とし物だった

 萎びた茎にまだ
 みずを 吸い上げる力が残っていて
 ゆっくり頭を持ちあげてくる

 艶を奪われた自分の色など 分からず
 もう一本は 花びらを開くこと
 出来なくなってしまっていて

 ひたすらに今枯れつつも枯れ切るまでを
 咲き続け

 咲きつづける
 すがた断つことに
 生命がきりりと鳴って虚空へむかって飛び去るのだろう

 


自由詩 切り花 Copyright リリー 2023-03-09 05:10:48
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