春の声
soft_machine

 なつかしい声に ふり返ると
 まだ冬だった
 困惑したり 暖めあった
 窓辺から
 ありふれた粉雪に
 見えかくれして
 息をきり
 背をのばすと
 秋のひかりは澄む
 夏の水が 透きとおっている
 遠い春を
 淡くかすませ
 春だから
 渦にまかれた かるい布
 仄かな空を
 さようなら と、纏い
 別の季節と 語らっている

  となりの扉を 叩かないで

  駐輪場の隅で
  哀しい歌を 口ずさみながら

  みじかい記事ばかり
  乱暴に書きつけ

  弱い わたしを
  置いていかないで

 地図には映らない
 花は 空色にかわく
 まるで昨日の 誰かのように
 そっと掬い
 胸ににじむ
 ふるい岩しみず これは
 いつまでも 誰かが足りない
 遠い春の 声のまぼろし





自由詩 春の声 Copyright soft_machine 2023-03-01 13:36:42
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