春の声
soft_machine
なつかしい声に ふり返ると
まだ冬だった
困惑したり 暖めあった
窓辺から
ありふれた粉雪に
見えかくれして
息をきり
背をのばすと
秋のひかりは澄む
夏の水が 透きとおっている
遠い春を
淡くかすませ
春だから
渦にまかれた かるい布
仄かな空を
さようなら と、纏い
別の季節と 語らっている
となりの扉を 叩かないで
駐輪場の隅で
哀しい歌を 口ずさみながら
みじかい記事ばかり
乱暴に書きつけ
弱い わたしを
置いていかないで
地図には映らない
花は 空色にかわく
まるで昨日の 誰かのように
そっと掬い
胸ににじむ
ふるい岩しみず これは
いつまでも 誰かが足りない
遠い春の 声のまぼろし