修羅
なつき

まざまざと見せ付けられる
世の流れ、森羅万象
襲い来る孤独の波に
戦慄く躰、擲って
涙の夜も、遠くなり
君の瞳の奥までは
一歩ずつでも、前に進みたい
何もかも、もう終わりでも
誰も何も見ずとも、悔いなどないから
ただひとつ、君の蟠りなら、僕はちゃんと、知っていたよ、気付いていたよ

花吹雪の中、幼子のように
僕は抗った、先を急いで
七色の虹が、空に塗られると
瞬きもせずに、じっと見つめ出す
ふとしたことでも、涙は溢れ
こんな日々でさえ、奇跡だったと
今更のことを、漸く知って
まだ繰り返すよ、僕は修羅の子

心の中、君が泳いで
浮つき気味、何処まで傷心
いつかの恥、忘れ去ろうと
悶えて、足掻いて、それでも
凛として、人らしく在れたなら
もう十分
君になら、今だから云う
ありがとう、それだけをなお
去来するのは、寂しさとともに
本当にそれだけ

無我夢中で生きたなら
きっとまた会える筈で
何処かでまた
互いの道、交わる筈
その日まで、一歩ずつでも
前に進もう
秘めたる思いはおくびにも出さずに
さようならには、まだ早い
愛しているかは、判らない
だからもう一度
君になら、ありがとう

今だから思う
心より、君がいつかの星空のようで
遠き夜
プルシャンブルーの宙に溶けて
宵闇の中
君があの日の星空のようで
だから僕も、今もツンとした
この青空の一部になって
君の逞しい魂に
いつか会いに行くから
その日まで、頑張ろうね

本当なら表面の削れ切ったこの硝子細工の心の奥の奥まで杭で貫きぶち壊したくて
もう本当に何もないから
愛も夢も居場所も明日も希望も安らぎも
本当に何もないから
崩れて拉げて腐って泣いて砕けて散って
それでもまだ諦め切れなくて
ここにきて、己もまだ人間であることの証が、漸く出てきた
そんなことにすら気付けないでいて
あぁ、馬鹿だったんだな、自分
そう思って
一晩中泣いた

心の奥、まだ痛む
腐乱したままの表面のびらん
そのまま温めて
包み隠さず生きてゆく
僕ならまだ大丈夫
いざとなったら
もう一度、また馬鹿になるから
それもまた今生あればこそ
あればこその、修羅の道
これあればこそ、人の世もまた上等なり


自由詩 修羅 Copyright なつき 2023-02-26 10:19:06
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