いくつもの運命(二)
朧月夜

そのころ、エインスベルは何を思っていただろうか。
自分が誘拐を阻止したクシュリー・クリスティナが、
彼女を憎んでいる、ということは知っていた。
(クシュリーは、魔導士全てを憎んでいる……)

そして、自分は世界を滅ぼしかねない存在。
我を忘れれば、軍隊の一つくらいは一瞬で抹殺できる。
彼女の師、オスファハンが彼女を恐れているということも、
先の戦争で分かった。彼女は孤独だったのである。

今、戦士エイソスの部屋で、彼女は、元衛兵のリグナロス、
戦士エイソス、そして彼の妻であるクシュリーとともに佇んでいた。
しばしの沈黙の時間が、彼らの間に流れる。

しかし、彼女はイリアスがすでに誘拐されたということ、
祭祀クーラスの元で軟禁されているということを、未だ知らない。
イリアスについては、必ずアイソニアの騎士が守ってくれると信じていた。


自由詩 いくつもの運命(二) Copyright 朧月夜 2023-01-08 14:25:21
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