向こうの花畑だけが
凍湖(とおこ)

なにひとつ持っていかぬという気持ちで
日々、靴をはき
仕事をし
夕飯の買い物をして
靴をぬぐ

思い出も悲嘆も後悔も
生き残った人たちのもちもので
三途の川の向こうには持ち越せぬ

いつその川を渡るのか
自分の足でざぶざぶとわけ入るのか
それとも迎えの舟に乗るのか
わからないが

手ぶらでいくから

川を渡ったら
すべては色褪せるだけ
向こうの花畑だけが鮮やかでまぶしい
そうであってほしい



自由詩 向こうの花畑だけが Copyright 凍湖(とおこ) 2022-12-11 19:08:37
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