盗賊ヨランとアイソニアの騎士(四)
おぼろん

「大丈夫です。娘さんは必ず取り戻してみせます」
アイソニアの騎士は、床に散らばった皿の破片を片付けながら、
ハーゼル夫人を落ち着かせるような言葉を口にした。
しかし、(俺は遅すぎたのか!)という焦りもあった。

「それで、娘を誘拐した人物というのは?」
「クールラントの密偵でしょう。今頃姫は……」
「クールラントにいるというのですか?」不安げなコウロウ・ノーム。
「分かりません。しかし、その可能性は高いかもしれません」

そして、「我々はこの街から捜索を始めますが、
 奴らの狙いは、本当はわたしなのです」と、アイソニアの騎士。
「娘があなたの婚約者となってから、ある程度の覚悟はしていました」

一国の千人隊長になるということは、それなりの危険も伴うのである。
しかし、コウロウ・ノーム夫妻は、それでも娘と婿に命を全うしてほしいと、
思っていた。そして、二人は両手を組み合わせて祈るのだった。


自由詩 盗賊ヨランとアイソニアの騎士(四) Copyright おぼろん 2022-11-30 17:47:06
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クールラントの詩