ワイルドサイドを歩こうとする
ちぇりこ。

道を踏み外すには
道の上を歩かなきゃならない
そもそも道の上を
歩いているのかもわからない
気が付いたら道草を食う人でした
目的地まで真っ直ぐ歩くことの出来ない
Born to Be方向音痴、な人でした
原初の森を、菜の花の土手を
夏の妖精の内緒の抜け道を通り抜けて
突っ切った先にある
ただ置かれているだけの空間に
名前の知らない草花が揺れている
ぽつん、と取り残された足元から
在りし日の郷愁が
秋の終わりの夕暮れのように滲んでくる
ぽっかりと予定の空いた休日に
よし君からの誘いのLINE
草野球の人数集めに駆り出された

(グラブ持って外野に立ってるだけでええから
(面倒くせぇ、て相手のピッチャー
(エグい球投げよるやろ?
(打てるか!あんなん
(なんか昔な、都市対抗で優勝したチームのエースやて
(たかが草野球にマジになんな•••
(よっしゃ!ほなやろか

陽は中天に在り、風は無い
乾いた音がミットに吸い込まれる
ぼく達は一つの球に右往左往する
迷路の中の鼠のようだ
エンドラン、フルカンスタート、送りバント
小賢しい作戦など物ともしない
相手の投手は難攻不落の要塞で
ぼく達の前に立ち塞がる
一塁ベースは遥か彼方で
約束のように輝いているのに
だから、ぼく達は
デタラメなフォームで
デタラメなスイングで
見たこともない変化球の前に
屍の山を築いてゆく
生存本能は尽きかけても
歩くことは止められない
目的地は分かっているのに
誰も到達することが出来ない
だから、ぼく達は
ワイルドサイドを歩こうとする


自由詩 ワイルドサイドを歩こうとする Copyright ちぇりこ。 2022-11-26 08:54:46縦
notebook Home 戻る