l'impromptu
夜空に、勘違いをしたクロワッサンがさり氣なく輝いていたので、自轉車で深夜徘徊を決行することにした。念の爲、服を着て行こう。
夜風がバターの馨りがする Y / N
川緣に沿って一台の飮料水の自動販賣機が
「ウイーン」と云い
乍ら、低空飛行している。
そう、わたしは愛車、Tous les jours号でオーストリア、眞夜中のウイーンに辿り着いたのだ。
自販機が老獪な猫の樣に近づいてきた。なんとなくレモンティーを買った。百圓である。安い。來てよかった、ウイーン。(愛してる、多分)
喉が潤うと、水氣を奪うようなものが食べたくなったので、クロワッサンを夜空から取り外して食べた。
「外側はパリパリで中はフワフワモッチリでね、いやー美味かったっすよ」(談)
クロワッサンを食べてしまったのでウイーンは暗黑の都になると心配したが、見上げると黑い天空の中、バナナがシャンデリアのように耀いている。
腦中に、「スライスしたバナナを碎いたチーズクラッカーと共にプレーンヨーグルトにぶち込んで喰え」と云う思念が侵入してきた。わたしはそうするだろう。わたしはそうせざるをえないだろう。そうするのがわたしだろう。わたしなら當然だろう。兎に角・・・、だろう。この辺でやめておく。
わたしは服を脱ぎ籠に放り込むと、汗のガウンを纏うまで、濡れたサドルが滑るまで、風の中を驅け拔けた。