千の耳鳴り、脈打つ肉
ひだかたけし

遠くカラスが去っていく
静謐なはずのこの地が
今は揺らぎ
千の耳鳴りに
ざわめきたち

やがて夜闇が侵食する、
切断されたこの地を
それが、襲う

黄色い犬、徘徊し
黄色い犬、群れを成し

制御逸脱する、不安恐怖
混沌の渦、名を剥奪する

思考を喪失し浮き立つ知覚、
破壊される世界把持

物という物、剥き出され
脈打つ肉、宙に裂け

わたしは
わたしだ、
わたしは
わたしだ!

叫んでいる 誰かが 聳える白壁に 叫んでいる





遠くカラスが去っていく
均衡を保ったこの地が
今は揺らぎ
千の耳鳴りに
虚脱し

深い森にさ迷って
深い闇に彷徨って










自由詩 千の耳鳴り、脈打つ肉 Copyright ひだかたけし 2022-11-22 19:17:12
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