夜の住人
46U

砂糖で出来た四肢に諦念はめぐる
踊り子の腰に巻かれた拒絶
やわらかく宙を抱く腕の中で
見えない魚がくるりとひるがえる

塔のない町で 城のない町で
踊り子は眠りにつく 酒精の匂いに紛れて
隣の寝台には不眠の占い師
ランプの下で祈るように爪にやすりをかけている

革袋をひらけば色とりどりの爪紅
甘い赤を選んで そっと瓶をあける
この赤でなら そう きっと引き当てられるはず
あどけない寝顔の踊り子 彼女が望む未来を

やがて明け烏の声 ああ きょうも朝は来た
乾いた爪に さいごに息を吹きかけて
占い師はアブサンをグラスに注ぐ
恐ろしい太陽の昇る昼間 眠り続けるために


自由詩 夜の住人 Copyright 46U 2022-11-17 08:50:10縦
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