落花無残な夜を超えて
秋葉竹



  

ワンルーム
ひとり暮らしで生きている
いまは


むかし
大好きな
彼が綺麗な花を買ってくれた

ムーンダストプリンセスブルー

クリスタルの花瓶に挿したよ

洗濯し立ての
真っ白なワイシャツを撫でるだけで
バカみたいに嬉しかった

(十代の頃の初めてのヤツみたい)

だからほかのものは
なにも欲しくなかった

最後に
なにを望めば良かったのか?


忘れたいことばかり
増える日々の流れのなかで
茜の静けさを
ずっとみつめていたくなったり

人はひとりでいるから
なにかが
こぼれ落ちるのかもしれない

それをほおっておいて
笑って吹きさらしの風みたいに
ほおを乾かしてくれるのを
待つ

三角形の
幸せがみんな同じように並んでいる
屋根をみおろすワンルームで

馬鹿みたいに
幸せを手放したあの言葉を想いだし
けど
懺悔のひとつもできないで

わかってはもらえないだろう
透明になりたいまま

なにを待ちつづけているのだろう


ムーンダストプリンセスブルー


なにを

想いだしてしまっているのだろう
 










自由詩 落花無残な夜を超えて Copyright 秋葉竹 2022-11-10 21:34:13
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