脱出(十六)
朧月夜

「では、行きますよ。アイソニアの騎士様。
 これで次元跳躍は……三度目ですね」と、ヨラン。
「おいおい、俺は次元跳躍なんてしたことがないぞ?」
「お忘れですか? ハーレスケイドへと行くとき。帰るとき」

「あれが、次元跳躍だったのか? 魔導士ウィザムと来たら……」
「わたしは魔導士ウィザムではございません。騎士様」
ヨランはふと、ハーレスケイドで魔術が使えたことを、
エインスベルに話しておこうかどうか、迷った。

しかし、これは禁忌に触れる話題なのではないか、という恐れがあった。
ヨランは、軽く頭を下げ、次元跳躍が可能な場所へと、
アイソニアの騎士を導いていく。

エインスベルはそれを、思案気な目つきで見つめていた。
(ヨラン……彼は何かを隠している。それは何だ?)
リグナロスは、「エインスベル様。急ぎましょう」迷う彼女をうながして言った。


自由詩 脱出(十六) Copyright 朧月夜 2022-11-10 20:06:53
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クールラントの詩