脱出(十五)
おぼろん

「甘い、というのは遺憾だな、エインスベル。俺は……」
「黙って」エインスベルは、アイソニアの騎士の唇を指で押さえる。
「これ以上は何も言うなというわけか。良いだろう。
 俺は、イリアスの救出に行く。ヨランとな……」

「それが良いでしょう。わたしは気になることがあるのだ。
 この虹の魔法石にしろ……」
「なあ、なぜあの虹の魔法石は消し飛んだんだ?
 これだって同じ、虹の魔法石だろう」

「分からない。あるいは、この石は人の心と体から力を得ているのか……」
「この監獄も妙だもな。看守の数が少なすぎた。
 囚われているのが、政治犯と魔導士ウィザムだけとは言え」

「わたしも妙だと思うのだ。この魔法石は、内側から光っている。
 まるで、魔法石の内部にもう一つの魔法石があるかのようだ」
エインスベルは、虹の魔法石を手に取ってもう一度目をこらした。


自由詩 脱出(十五) Copyright おぼろん 2022-11-10 20:05:45
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クールラントの詩