脱出(十四)
おぼろん

「おい、エインスベル。奴の目的は何だと思う? 奴というのは、
 もちろん祭祀クーラスのことだが」アイソニアの騎士が苛立たし気に言った。
「分からない。事を有利に運ぼうとしているのは、分かる。
 あるいは、わたしを殺し、あなたをクールラントに取り戻そうとしているのか……」
 
「俺は、もうアースランテの人間だ。国を裏切ることはしない。
 それが、誰の命を賭けたものだったとしてもだ」
エインスベルは溜め息をつく。「そうなのでしょうね。
 あなたは、アースランテの千人隊長。次なるライランテの戦いで、
 
 わたしの味方をするということはないでしょう。ですからこそ、アイソニアの騎士よ。
 あなたは、今すぐこの場を立ち去ってください。戦場において、
 わたしも敵に情けをかけるということはしたくありません」

「何を言うのだ? エイスベル! 我らは平和のために戦う。少なくとも俺は!
 平和という共通の目的を持っているのであれば、それらは皆仲間なのだ」
「あなたは甘い、アイソニアの騎士よ」エイスベルは再び憂いに満ちた表情を見せた。


自由詩 脱出(十四) Copyright おぼろん 2022-11-09 18:09:45
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クールラントの詩