脱出(十三)
おぼろん

「分かった。俺は俺の妻を救いに行こう。おい、ヨラン!
 次元跳躍の魔法は使えるのだな? 彼女の前に跳躍してみせろ」
「何とおっしゃします、騎士様。あれは、この身をすり減らすものなのですよ?
 滅多なことでは、使えないのでございます……」

「これが滅多なことではなくて、何であろうか。
 エインスベルの処刑は、予定では二日後だった。
 クーラスは、万全の準備を整えているに違いない。
 俺のイリアスに手出しをしたら、俺は、奴らを全員八つ裂きにしてくれる!」

「ヨラン。アイソニアの騎士のことは、任せた。では、わたしとリグナロスとは、
 戦士エイソスの元へと向かうとしよう。何、祭祀クーラスも、
 わたしたちが時間を超えて旅をした、などとは思っているまい。
 
 わたしの処刑は、二日先にあるべきことなのだ。それまでは、
 奴らも油断しているであろう。問題は、彼らがその心の奥深くに、
 何を隠しているかだ。アイソニアの騎士も、ヨランも、それを探ってほしい」


自由詩 脱出(十三) Copyright おぼろん 2022-11-09 18:09:06
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クールラントの詩