脱出(八)
おぼろん

「ヨラン、一つ確かめておきたいことがある。
 これは、本当に虹の魔法石なのか?」エインスベルが重い口を開いた。
「先ほどの魔法、通常の魔法と異なっているようには見えなかった」
エインスベルは、ヨーラ・テルやヒアシム・カインの魔法が使えたのである。

「わたしが思うところ、それはエランドル様の体の中から、
 取り出されたものだと思うのです……」ヨランが思案気に首を傾げながら答える。
「すると、わたしはいずれこの魔法石に取り込まれるということか……」
エインスベルのトリッキーな論旨を、ヨランは即座には把握できなかった。

(エインスベル様が石になる? 馬鹿なことを)と、ヨランは思ったのである。
しかし、エランドルはたしかに体内から虹の魔法石を取り出した。
虹の魔法石と、人の命とが直結しているであろうことは、間違いなく思われる。

(もしや、虹の魔法石とは、人を霊体に導く鍵のようなものなのか……?)
エインスベルは、胸元にしまった虹の魔法石をそっと取り出して、見つめる。
その魔法石のなか、中心部分から、外延部とは異なる光が発されているようだった。


自由詩 脱出(八) Copyright おぼろん 2022-11-07 17:32:38
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クールラントの詩