脱出(六)
おぼろん

「ところで、エインスベル様。このごろ、気になった話があるのです」
リグナロスは、エインスベルに振り向いて言った。
「実は、祭祀クーラスが良からぬことを企画していると……」
エインスンベルは、きつい目つきになった。

「実は、祭祀クーラスが、戦士エイソス様の妻と、
 アイソニアの騎士様の婚約者とを誘拐しようとしていると、
 そんな噂があるのでございます……」
「何だと!」アイソニアの騎士が怒号を発した。

「俺の妻、イリアスを奪うだと?」その怒りは、この監獄自体をも壊しかねないものだった。
「いつだ! いつ、クーラスはそのような姦計を計ったのだ?」
アイソニアの騎士の怒気に、リグナロスも怖気づく。

「詳しくは分かりません。しかし、事は喫緊の課題であるのだと思われます」
「許さぬ! イリアスを誘拐するなどと! 彼女はまだ子供だぞ!」
「しかし、祭祀クーラスは、手段を選ばぬお人。放ってはおけますまい」


自由詩 脱出(六) Copyright おぼろん 2022-11-07 17:30:21
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クールラントの詩