クーゲンドルにて(十五)
朧月夜

「汝が拒絶するのであれば、それも良い。だが、
 それでは、虹の魔法石を与えることはできない。絶対にだ」
「それは、困ります。わたしどもはなんとしても、
 エインスベル様を救わねばならないのです……」

「それは何のために?」落ち着き払って、ライディンゲルが尋ねる。
「ライランテ大陸の平和のためです。今、ライランテ大陸では、
 次なる戦争が起ころうとしています。それを、エインスベル様の力で、
 防いでほしいのです」ヨランは必死に言明した。
 
「祭祀クーラスとの争いだな。しかし、それも俗事。
 戦争など、過去からいくらでも起こってきた。世界の改変なくして、
 それを止めることはできない。それも、根本からの改変だ」

「あなたは理想ということに捉われすぎている。恒久平和など、
 人間がかつて望み得たものでしょうか? わたしたちに必要なのは、
 ひと時の平安です。愛する者の命です。そして、子孫を残すことです」


自由詩 クーゲンドルにて(十五) Copyright 朧月夜 2022-10-20 22:52:32
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩