希望のうた
秋葉竹



ひからびて
地面に寝そべっている
いまにも死にそうな
一本の草があった

昼は暑くて日影を欲し
夜は寒くて凍えそうな

笑えない、
希望がない、
生きることさえできない、
ような
運命に
抗えない
草が一本、あった


初めてそれをみたとき
心が痛んだのは
ただの同情とか憐れみとか
そんな気持ちだったかもしれない
でも、
心の傷口から
ドクドクと血が流れてゆくのを
知ったとき
その草が
私そのものなんだとはっきりとわかった


もっと
生きるための
光を浴びていられるように
もっと
生きるためには
水を飲まねばならないように

心の闇の壁を
取り壊さなければならない
死んでも、いいや的な
あたたかな諦めを
棄て去ってしまわなければ
いけない

たとえば
なにひとつ
楽しいことがない毎日がつづいても
それは
滅失ではない

たとえば
一日に一度も笑えない日々がつづいても
それは
業火ではない

しめつけられた
小さな胸の
痛みもあたりまえだし
他人の言葉に
嘘の匂いを感じるなんて
おそろしいことでもなんでもない

せめて
保とうとする心は
弱くならないようにする、
ささくれ立たさないようにする、
疚しくはならないようにする、

だからこそ
痛くもない痛みに
怯えたりしないように

ドクドクとながした血は
じつは
心の毒を
洗ってくれているんだと

いう真実をちゃんと知って

萎れかけの草も
光と水さえあれば
きっと
大空をみあげて
大空に向かって
立ちあがることができるから

だれのことも
どんな運命も

恐れないで、
怖がらないで、

生きる意味さえちゃんと知っていれば
生きることって
けっこう星の海を泳ぐ
幻想なんかも受け入れてくれる

三日月ハンモックに
ゆ〜ら、ゆ〜ら、とか
ダイヤモンドの街をみおろしたりしてね











自由詩 希望のうた Copyright 秋葉竹 2022-10-18 06:27:45
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