けわい
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唇を飾りたいなんて
子どもの頃から鏡の前で
幾つ思い数えたでしょうか
星に願われた膜があって
それも人の愛し方のひとつと
知るはるかむかし

考えなかったのでしょう?
また会いたいなんて
どこにも移さなかったでしょう?
孤独の渦の中で
冷たいひかりに触れたあの日
曇りついた鏡の奥にならぶ影が
またひとつ増えた日

しなる木軸を差し
笑い描く円
内と外とに
裂かれる歪線
蛇行する牛や離水する雁が
岩肌に浮かび上がる
すべての顔の終点を
残せるものなら
生まれ変わりも受け容れたいと
雨に流されず尖り
涙に崩されず研く
伝える思いだけをひたすらけわう

仕舞い先は密かにすませた
出会いの裡にも別離は棲むのだから
子どもらは筆を択んだパレットで
指おりながら
宙にあそびながら
これから糸を張るでしょう
異形の目覚めを静かに憧れ
人の箪笥へ椅子をつみ
ひんやりと伸ばす陶粉につつまれ
いつか、ならんで魚と泳ぎたいと



自由詩 けわい Copyright soft_machine 2022-09-27 17:45:36
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