水の地をすぎて Ⅱ
木立 悟








雨 雨 孕む雨
雨 雨 流す雨
水がしばらく水でなくなり
再び水に戻る時
雨粒の間を 越えてくる声


真夜中の光が隔てる心を
多くの花が見つめている
誰もいない径どうしがつながり
ずっとそのまま つづいてゆく


いつもより蒼い曇に追われていると感じるなら
畏れることなく歩みを遅くし
何が起こるかを見つめることだ
午後の宝を受け取りたいのならば


雨の剣 遠のく目と目
径にはひとり 風の影
坂を知らない子供たち
巡るばかりの子供たち


骨の羽で何を斬るのか
水たまりの底は深まり
いつかもうひとつの海となり
初めての雨粒を語り継ぐ


線路の向こうから建物を見
銀河の向こうから故郷を見る
背には常に滴の跡
さらに遠い背につづく地図


蒼から白へとこぼれる空
端の曲がった紙から先に
地と海の間に消えてゆく
幾十も幾百も 背にあふれる羽の息


濃い霧
避けようのない波
雨と雨を指でひらくと
菓子のにおいがやって来る


咲いては消える水の花
音だけを残す夜の花
霧の街に散る霧の花
拾い集めてはすぎてゆく子ら


水たまりの底に花があり
深すぎて深すぎて届かない
光 爪 月 蒼
遠まわりの径を描き出す





















自由詩 水の地をすぎて Ⅱ Copyright 木立 悟 2022-09-15 21:24:28縦
notebook Home 戻る