写楽
服部 剛
久々に寿司屋の暖簾をくぐり
独り腰を下ろす
机にはコロナ対策に透明の板が立ち
私の人影がうつる
お猪口に注いだ冷や酒が進み
硝子の徳利も軽くなる頃・・・
影がそっと囁いた
──お前は一体何者か?
不意に
わたしがわたしであることが
世にも不思議であるような
何か自分のやることがあるような
思念は宙に浮かんで、消えた
美味い中トロを
食べ終えて
写楽という名の酒の残りを
くいと一口、呑み干して
私はがららと席を立つ
自由詩
写楽
Copyright
服部 剛
2022-09-13 16:15:12
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