衝動の夏
塔野夏子

透明すぎて何も見えなくなった視界を
侵蝕する夏

振り向いては駄目と云った
爛れ落ちてゆく意識で
最後に何を感じたの

ああ ものう
純粋ごっこの残滓に
濁った火をつけて
もう一度あの衝動が欲しいだけ

驕慢なままでいられたら
答えはあると思ってた

急速に暗転
だけれど所詮
透明すぎて何も見えなくなった視界
侵蝕せよ 夏

花火や 蝉の声や 夏らしい何もかもを
振り向かなかった幻影へ
ちりばめてしまえ

ああ 気怠い
あの衝動が逃げ水のように
一瞬 閃いて 消えた



自由詩 衝動の夏 Copyright 塔野夏子 2022-07-31 11:30:20
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