祝福
来世の

私の骨を粉々に砕いて、撒いた
丁寧に幾度も叩いて粉々にしたので
さながら机上にのみ立ち現れる楽園の一片
真白い砂浜の一掬いのようだった

私を制御しきれない時間
私という生き物について考えていた





底など見えず、海は愚者の色で満ちていた
何かを捨てるための色だ
連々と濁った音を立て、それが場違いにも心地良かった

無益なだけの情動を
生暖かい風が解体していく

一つずつ器官や神経を外し、順に捨てたならば
荒々しく食い千切る凄絶さは寸刻
時には最後の飴玉をいつまでも惜しむように
波へ攫われやがて沈んでいった

もう彼らが息を吹き返すことはない


別れの言葉が一等好きだった
だから小指の爪を舟にして
ふうっ、と息を吹きかけ乗せた
背を向ける隙さえ与えられず、転覆するのだとしても


手足も脳髄も心臓もなくし
私は自由を形作る





撒いた種から未知の生き物が生まれゆく様を
何億年後、想起している



自由詩 祝福 Copyright 来世の 2022-07-30 19:12:56
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