地下室のヨラン(三)
おぼろん

「では、何だと言うのか? この部屋は、我らを閉じ込めておくための、
 牢獄ではないと言うのか? オスファハンは、
 エインスベル様の、そしてクールラントの敵に違いないのだ。
 祭祀クーラスとも通じているやも知れぬ……」

「あなたは、いささか飛躍が過ぎます。この部屋は、
 オスファハン殿がここに越して来る前から、存在しました。
 おそらくは、秘密の会議を催すための小部屋だったのでしょう」
ヨランは、エイミノアを落ち着かせるように、言い聞かせる。

「これをご覧ください、エイミノア様。この邸宅の秘密が、
 ここに記されております。どうぞ」一つの紙片を、ヨランが差し出す。
「何? この暗さでは見えないな。いったい、お前は何を持っているのだ?」

「はは。そのための準備もしておきました。これを……」
ヨランが小さな木切れを取り出す。そして、床に擦りつけて、灯りを点けた。
エイミノアは驚く。「お前は、確か魔法は使えなかったはず……」


自由詩 地下室のヨラン(三) Copyright おぼろん 2022-07-23 19:42:57
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クールラントの詩