夏の泡
そらの珊瑚

波打ち際の賑わいに飽きて
少し沖へと泳ぐ
足が地球に着かなくなれば
急に独りが押し寄せる

海は突然生き物になる
いくつかのうねりを助走にして
高くそびえ立った
生まれたばかりのその腹は
限りなく黒に近い青
落ちてくる心臓へ飛び込めば
しーんと静かで
夏を裏返したような冷たさの中で
空へ浮上するまで長い長い数秒

砕け散った波の果ての泡々
拾っても拾っても
指のすきまをこぼれていく
盆を過ぎたらここへ来てはいけない
そういうふうにできている




自由詩 夏の泡 Copyright そらの珊瑚 2022-07-13 14:06:53
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