リグナロスとエインスベル(二)
おぼろん

「軽々な発言はしないほうが良いぞ」
エインスベルは、振り向かずに言った。
「ご安心くださいませ。わたしはあなた様の味方です。
 そして、祭祀クーラスを憎む者です」リグナロスの声が響く。

「今、言ったであろう。軽々な発言は慎んだほうが良いと……」
「違うのです。今のわたしには味方がございます。
 あなたもご存じでしょう。ヨラン・フィデリコという盗賊です。
 彼が、あなたの魔法石を用意しているのです」

「魔法石があったところで、この牢獄からは出られぬ。
 そなたも存じておろう。この監獄は、何かがおかしい。
 秘められたことがあるのだ。魔導士のわたしには分かる」

「それです。今は何も申せませんが、あなたは必ずここから出られます。
 わたしには確信があるのです。どうか、お諦めになりませんように」
「わたしは何も諦めてなどいない。今は眠りたいのだ」


自由詩 リグナロスとエインスベル(二) Copyright おぼろん 2022-07-11 19:37:00
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クールラントの詩