銀色のプラットフォーム
塔野夏子

銀色のプラットフォームは静かだ
何かが終わってしまったような
白い虚ろな光があたりを満たしている

駅名表示もない 時刻表もない
すべての列車はもう過ぎ去ってしまったのかもしれない
他の乗客も駅員も誰も見あたらない
この静かすぎる銀色のプラットフォームで
僕はいったい何をしているんだろう

ただ線路はしんと光を反射しながらそこにある
見える限りの彼方から彼方まで
遠くには陽炎がゆれているようだ

この白い虚ろな光は
終わりのない夏を思わせて

ふと線路の上にパレードがあらわれる
色とりどりにはなやいで
楽の音と紙吹雪をまき散らし

それは幻影 蜃気楼
それとも記憶の残像
いずれにしてもそれは不思議にあざやかで

そしてまたふとそのパレードはかき消える
白い虚ろな光の中 銀色のプラットフォームに
ひとり佇む僕を残して

古ぼけた空っぽの旅行鞄といっしょの僕を残して



自由詩 銀色のプラットフォーム Copyright 塔野夏子 2022-07-11 11:19:03
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