オスファハンと盗賊ヨラン(六)
おぼろん

(この短時間に、話をエインスベル様のことへ持っていくとは……)
エイミノアは、感嘆していた。盗賊ヨランは、ただ者ではないのかもしれない。
エイミノアは、ヨランとオスファハンとを交互に見つめた。
(あるいはオスファハンを脅迫して、情報を聞き出すことも出来るのではないか?)

「この者は戦士です。この狭い執務室の中で、あなたにいかほどの魔法が使えますか?」
ヨランは畳みかけるようにして、オスファハンに言う。
「話だけは聞こう。しかし、無作法が過ぎるのではないか?」
「盗賊とは、常識の埒外にある者です。今更、作法もないでしょう」

「分かった。護衛は呼ばぬ。その方の思うところを、話してみよ」
オスファハンは昼食の手を止めて、ヨランに向き直った。
彼自身、内心ではエインスベルの身を案じていたのである。

「エインスベル様は、……翌月の満月の夜、処刑されることになっています」
「なんと、事態はそれほど急だったのか? 彼女は二年あまりは収監されていたはず……」
「そうです。状況は余裕のあるものでした。しかし、今はそうではないのです」


自由詩 オスファハンと盗賊ヨラン(六) Copyright おぼろん 2022-07-06 16:31:17
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