bird land
ちぇりこ。


「孤鳥」

規則正しい通りの両側には、規則正しく家々が立ち並ぶ、それぞれの窓は開け放たれており、バルコニーには規則正しくbirdが並んでいる、birdは均等に朝を迎える、birdはお互いを決して見ない、送電線に区切られている空にはルチル混じりの雲が、朝の陽を受けて内向的に浮かんでいる。
毎日決まった時刻にベーカリーの釜に火が入れられる頃、家々のテーブルでは焦げたトーストの匂いだけが毎朝積み重なってゆく、カーテンの隙間から侵入する曖昧な光芒は、骨格のない部屋の輪郭をはっきりさせてゆく。
風切羽を脱いで、birdは規則正しく身支度を整える、履きなれた古い靴を履いて、規則正しく歩いてゆく、区切られた空と平行して続く道の上、両翼を規則正しく折りたたんで、空は見あげない、そうして規則正しく生きてゆく。


「bird-garden」

鳥は、鳥としての羽ばたきを静かに終えた
羽根にまつわる神話を読んでいる
かつて、と呼ばれるほど
空は、区切られてはいなかった

午後を丁寧に折り畳む
庭に置かれた白いチェア
伏せられた背表紙の
懐かしい文字列に
遠くの雨雲が呼応する

震える、睫毛の先に午睡は盗まれて
遠雷は、溢れる白を持て余す

鳥は、鳥として羽ばたいてゆき
庭は、庭としての豊潤を育む

夕方には
雨足が強くなる、という


自由詩 bird land Copyright ちぇりこ。 2022-06-29 22:37:30
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