硝子一粒、海。
武下愛

初めの一粒は丸みを帯びてさえおらず
二粒三粒とぶつかり合って砕けては
刺さりさえした

色合いはその都度変わり続け
真っ黒になった事も有った

増えていく度に刺さり続けていた硝子も
気付けばぶつかり合う事で丸みを帯びていた

真っ黒だった色も
透けて透明になって行った

一粒一粒に色がある事に気付く頃には海になっていた
私は飛び込む事を初めは恐れた
溺れてしまうのではないかと考えてしまったのだ

陸を越えて私を飲み込んだ時気付いたのであった
私は溺れない事を知って
また一つ硝子の粒ができた
その硝子の粒には名前が無い
今も名付けできていない
だから何時か何時かと歳を重ねていくのである

私にとっての海は端的に大きなモノとしてある前に
一粒の集合体なのである
私は海にあなたと名付けている

あなたの一粒一粒が今日も鳴いています
色彩は淡く光っているように見えています
海と私は守りあっています


自由詩 硝子一粒、海。 Copyright 武下愛 2022-06-29 14:30:26
notebook Home 戻る  過去 未来