盗賊ヨランの旅(四)
おぼろん

ヨランの落ち着き払った様子に、エイミノアは苛立った。
自分にしろ、数々の戦いを経験してきている。
それなのに、このヨランの冷静さと来たらどうだ。
まるで、怖い物を目にしても物怖じしない赤子のように思える。

「わたしが先鋒を務める。お前は安全なところから援護してくれ!」
「わたしには戦が出来ないと、あなたは思ってらっしゃるのですか?」
「そんなことはどうでも良い。すべてはエインスベル様のため……」
「それはわたしも同じことです」

魔物たちを前にして繰り言を繰り返す、それがどれほど愚かなことか。
エイミノアには分かっていた。いや、分かっているはずだった。
エイミノアは剣を抜く。グルレッケは十数頭はいる様子だった。

「いざゆかん!」エイミノアが突撃しようとする。
「しばしお待ちください、エイミノア様」その突撃を、ヨランが制した。
そして、背嚢から何やら取り出している。それは、雷撃の魔法弾だった。


自由詩 盗賊ヨランの旅(四) Copyright おぼろん 2022-06-28 19:02:57
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