ショートカット
キリコ

感電間近だ もう少しなんだ 送電塔から あの娘の家まで
たゆたゆしていた ケーブルたちも 近くで見たなら 意外と無骨だ

この川の先を ぼくらは知らない あの娘も知らない 、ことすら知らない
ぼくらもいつかは 街など忘れて つぎの街へ行き  また街に戻る 


ぼくは夏風邪 少しこじらせて  鼻がつまって しんどくなってて
いつも飲んでる サイダー不味いし いまはついでに 目ばちこなってる
散々だけど はっきりしている  ぼくの頭は すっきりしている
ストローの端 ガジガジしている あの娘の犬歯 想えばうずいた


この川の先を 知らないぼくらは 知らないからこそ 無心になれるの
ぼくらがいつかは わすれる街など つぎの街行けば 崩れてなくなる


ぼくは河川敷 鉄はしごの先  土手のいきどまり  のぼっていたんだ
送電している 根元を伝った  近くで見たなら  ちょっとグロテスク


感電間近さ  雨がふりそうだ  火花をちらした 送電塔から
あの娘の家まで たゆたゆしている ケーブルの束が 重みでたわんだ


この川の先を 知らないぼくなら 知らないからこそ 無心になれるの


ぼくの目ばちこ かゆみ帯び始め すこしあかくて二重になってる
誰だかわからん。 ほどではないけど ちょっと微妙。 という気もしている
散々だけど  はっきりしてるよ  ぼくのきもちも すっきりしている
ストローの端、ガジリ 噛みながら あの娘、ぼんやり テレビを見ている


自由詩 ショートカット Copyright キリコ 2022-06-25 16:48:08
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