服部 剛

ぶーん
と、軽やかに宙を舞う 
一匹の蚊よ
命がけで人の血を吸う 
機会を狙うお前よ

逃げなさい

大きな黒い手の影が 
生きることと背中合わせの
お前をいつも追っている 

早く逃げなさい

小さなお前に憐みの目をそそぐ私の
この手さえ
ひと度肌に着地すれば
お前をぺしゃり、と
やるだろう

あの頃会社で、つぶれちまった
ひしゃげた姿の私のように

だから もし 
この詩を読んでいる
世界にたった一人のあなたが 
つぶれてしまいそうならば
あの隠れ家へ

一刻も早く、逃げなさい











自由詩Copyright 服部 剛 2022-06-18 23:45:07縦
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