もしも裏返った星にたどりついたら
来世の

窓辺で飛行船をながめていた彼女も
結局は海の底 深く深くただよって
そうだね、
かみさまは後ろ暗い思いをかかえはしない
きりがないからね

突然にねむたくなったり
ねむりたくなったり
まあるく走る萌黄色のラインに
ひもすがら ゆられてみたくなったり

もしも裏返った星にたどりついたら
わたしのこと憶えているでしょうか
利き手は反対に
三角タイは色ちがいに
地面は屋上に
そんなあべこべな世界で
机ふたつ繋げ おべんとう広げ
きみとおはなしできるでしょうか


骨組みの上を歩きはじめてすぐに
踏みはずしたローファーが
まぬけに真っ逆さま
時間差 水飛沫のかすかな反響

そして再び どこまでもあたたかく凪ぐ
暗澹たる奈落の内に
いくばくかの理解を得た気になってしまう
そうだね、
かみさまは全員を慈しんではくれない
きりがないからね

わずかばかり細められた瞳も
口元に手をあてた控えめな微笑みも
二言三言で終えた会話だから
ひもすがら 苛んでやまないの

もしも裏返った星にたどりついたら
わたしのこと憶えていないでほしいよ
教室はふかふかの羽根まくらに
醜い心は人並みの愛に
「さよなら」は「はじめまして」に
そんなひとりよがりな世界では
机ふたつ繋げ おべんとう広げ
きみとおはなしできないでしょうか
きみが旅する飛行船に
乗せてもらえやしないのでしょうか


……どっか行きたいなあ
満員だって降ろされたプラットホーム
彼女の心象に溶けてしまいそうな
ひゅうと凍えた風に身をまかせて

カーディガン一枚じゃ足りなかったね
って肩を寄せ笑いあって




自由詩 もしも裏返った星にたどりついたら Copyright 来世の 2022-06-13 12:10:40
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