円周率の旅
服部 剛
あの頃「敷かれたレール」から
逸
(
そ
)
れて
長らく僕は、台本のない道を歩いてきた
最近ふと立ち止まり
ふり返った背後の道に
無数の数字が記されていた
3.14159265359………
どうやら僕は自分が誰か?を知るために
円周率の道を歩いてきたようだ
ある人はそれを「無謀」と
呆
(
あき
)
れ
ある人はそれを「馬鹿」と叱り
ある人はそれを「勇気」と讃え
ある人はそれを「すてき」と伝えた
僕は単なる馬鹿じゃなく
とびきりの勇気があるわけじゃないけれど
ひょっとすると「すてき」なのかもしれない
とうの昔に踏み出した足は
このまま円周率の旅を歩いてゆくだろう
何処へ続いているかは、誰も知らないから
明日の風に身をまかせ、僕は
闊歩
(
かっぽ
)
するだろう
君に打ち明けるなら、この
3.14159265359………
の道を往くことは
何にもましてわくわくと
胸の鼓動が高鳴るんだ
この手紙を書き終えた僕は
ふたたび歩き始めよう
昼は花々と木の葉たちが歌い
夜は星々がそっと囁く
この世界が
二度とない物語だと
知る日まで
自由詩
円周率の旅
Copyright
服部 剛
2022-05-23 00:45:43
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