朝焼けの空を眺め
秋葉竹
夜が明けるまえに
聴こえる悲しみのなかから
海の音を選んだのは
この国で恋を失った人魚が
そこで泣いたと聴いたから
夜の花がしおれてゆき
夜は最後の呻めき声をあげて
抱きしめてくる朝日から
逃げはじめるのだ
裸足のままで
あしたの夜へ歩いてゆく
そして僕は
ずいぶんとむかしから
そこにいたのかもしれない
夜明けにみつけられた
一匹の蝶がひらひら舞うのを
一幅の絵として描くことができる
絵描きになりたい
そして僕は
むかしからの時の流れ
その虹色の道をみつけ出し
全力で走ることができる
少年の目を持つものになりたい
そしていままた知るのだ
時が流れる
濁流のなかにその身を捧げて
時の流れをとどめようとした
聖女もいた
それも夜ともなれば
泣いてばかりいる銀髪の彼女
だれか
この街に住む人々の
真実の心を教えてくれないか
人の心はどんなに正しい人の目でも
人の目にはみえないと聴くものだから
どんなよこしまな妄想も
光り輝く理想とされてしまう
ことにもなる
この街では
夜が明けるまえに
聴こえる悲しみのなかから
この街の人々の声ではなく
あの海の音を選んだのは
とても正しい選択だったと思う
朝焼けの空を眺め
その正しさに
透明な涙を流すほどには
自由詩
朝焼けの空を眺め
Copyright
秋葉竹
2022-05-15 06:37:32