あ、宇宙
吉岡孝次

調べを許しあう乾次元と湿次元の潮目で
なめらかに噛み砕かれ
時計神の血肉となる「震え」
くびれよりの滴りでしかないのに
濃度差で上/下に分かたれた空間から
現と過とが
在と去へと 翻ってゆき

みずから言祝ぐ許婚たちは
「夥しい、ってこうか?」と
履歴を
なれそめからの加速度で
お互いに埋め尽くして
きよらかに 濁して

夥しい《くびれ》よりの
真新しくも夥しい一粒ごとの《産卵》
光から闇へ
闇から光への 無数以上の無数の反転(スピン)
最小の虹のカクテル
最大の秘儀のマグマ
溶鉱炉ごと覆す、生のままの
密祭

認知を、「我こそは完遂者なり」と詐称する人狼の非を
手折って
もうお終いなんだと
はじめから裏返し 熱も色調も滑らし
流刑もここまでくれば喜悦だ!
なかったことにする
なかったことにした
舌がすることに《くびれ》が興じる
囀り 味わい
励起する欲望のまま
もつれさせ はからわず
導き

あ、宇宙
際限もなく許しあう乾次元と湿次元の潮目で
時計神の血肉となる「震え」
おのずから

歌へ


自由詩 あ、宇宙 Copyright 吉岡孝次 2005-05-02 21:04:35
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