罪を洗う風
秋葉竹



からだ汚れて帰る家には
やくそくなどなく
ひとの影もない



花が一輪、咲いています

ひとの影が肉なのだと
あるいは水分なのだと
あるいは血、なのだと

絶えることなく
ながれるこころを洗う
吹きさらしの風が
その恥ずかしい血を
流させ
その真っ赤な本心を
さらけ出すのだと
     
白猫が
そっと
その血とこころを舐める

色つきの夢をみたのです
      
こころの内側に
むかしばなしで鬼にさらわれた
さくら色のお姫さまの
居場所があるのです
   
浅い夢に溺れるのは
そういうわけで、です
                
ただ、いま帰る家には
ひとりが好きですと強がる
さくら色の姫さまの悲恋を慰める
横笛のねが奏でられておりますが

からだ汚れて帰る家には
やくそくなどない
ただのやさしいだけの風が
自由気ままに
吹きつづけているのでしょう

ようやく、わかりましたか?

花が、一輪。

その風に
吹かれて
ゆれる
ことになるでしょう
その風であることの
あるいは
その風になることの
罪深さが

ようやく、わかりましたか?
        
           








自由詩 罪を洗う風 Copyright 秋葉竹 2022-05-03 21:10:46
notebook Home 戻る  過去 未来