Kの思い出
番田 

小学生の頃、同じクラスで少しだけ目立っていたKは、中学生になってからはどうしていたのかは、よく、僕は知らなかった。彼は中学に入ると別のクラスだったからだが、でも、彼は小学生の頃は地元のサッカークラブに入っていたというのもあって、サッカー部に入っていたことは知っていた。しかしあまり強くなく、目立たない部活だったというのもあって、彼が部活の試合の中でスタメンで出場していたのか、それとも出てはいなかったのかは僕の記憶の中でははっきりしなかった。中学を出てからはどこかで彼を見かけるようなこともなくなり、どこに高校は行ったのかも知らなかったが、僕は彼の名前自体を人から聞くことすらもほとんどなくなっていた。一度、スケボーをしていた姿を駅前で見かけたことはあったような気がする。でも、その姿を成人式では見かけることはなかった。最後に、小学生の頃に彼と遊んだのはいつだったのかも覚えていない。でも、あの夏の日は良く晴れていて、彼のリフティングをしていた姿を僕は確かに見ていたのである。それから、部屋で二人で水を飲んだのだ。彼はその日ボールを蹴り上げることができた回数を、母親に報告していた。そして、これから、サッカークラブにいくのだと言った彼の姿を見送ってから、僕は、いくつかの角を曲がって暗い道を家に帰ったのである。



散文(批評随筆小説等) Kの思い出 Copyright 番田  2022-04-30 01:26:34
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