鞦韆
秋葉竹


彼女のことは雪が降る夜に知った

罪を飲みこんだ白い獣の子が
すがるみたいな小さな鳴き声で鳴き
だれも好きになれない自分のことを
お手上げだから、と、足下の
黒い砂あたりを蹴り上げていた

こんやはひさしぶりに雪だねと
積もらないだろうけどねと
声を掛けて
そのあたまを撫でてみたかったが
それをするときっと
キッ!とこちらを睨めあげ
二度とこちらをかまってくれなくなりそうで

『わたしの罪は肺が汚れた彼女を泣かせること』

『同じ息を吸う夜に彼女の肺を凍りつかせたこと』

こんどまた会えるかな、と、尋ねたのは彼女の方
ただ握り締めた絶望の短刀をこちらへ向けて
そのあとはずっとうつむいてだまっていた

鞦韆を軽く漕いでいるので
ギィコ、ギィコ、と、夜の公園に泣き声みたいな
すすり泣きが聴こえたのか

はっきりと
忘れてはいけないことがある

さきに汚れているのはこちらの方

彼女のことは雪が降る夜に知ったこと












自由詩 鞦韆 Copyright 秋葉竹 2022-04-29 04:31:53
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