開戦前夜(三)
朧月夜

アースランテとの戦いには、エインスベルも招集されていた。
祭祀クーラスは、国民の声を抑えきれなかったのである。
エインスベルは、戦いを前にして正魔導士に任命された。
しかし、それは形ばかりのことだった。

エインスベルは数百名の兵士の指揮を命じられた。
これは、正魔導士にとっては少なすぎる数である。
つまり、エインスベルは、祭祀クーラスの野望によって、
かませ犬の役割を与えられたのである。

「エインスベルが多くの魔物たちを倒せば、それで良い。
 しかし、兵士たちの死の責任は、エインスベルが負うのだ」
祭祀クーラスは一人不敵に微笑む。

そこに、敵や味方という概念はなかった。祭祀クーラスは力だけを望んでいた。
一方のエインスベルは、クールラントという国に恩義を感じていた。
そして、クーラスは自分には勝てないだろう、ということも知っていた。


自由詩 開戦前夜(三) Copyright 朧月夜 2022-04-09 07:20:46
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クールラントの詩