冬の終わりの雪の日に
秋葉竹
私の角は
人を刺し殺す獣の武器
のはずだが
裸の胸に
苛立ちと
ふかく暗い傷を刻み続けた
だけだった
鬼としての
こころが欲しい
なにひとつたにんを気にせずいられる
欲しいものは欲しいといえる
石のようなこころを
持ちたい
だから
弱っている
たにんを責めるみたいな
情けないことはしたくないんだ
悲しみだけを
失くしてしまったみたいに
雪がふるのなら
ふりつもる白い
雪の道が
美しいと思ってしまった
火傷をしそうな
狂おしい熱が
冷めきってゆく
心
そして雪か
なにかを棄ててしまった
黄色いたそがれ
なにもできない事実に
心臓をえぐりとられた獣は
二度と明日が来ないと思わせる
静寂の街を
歩いている
すべてを忘れさせる
夜になるまえに
ただ一匹の白い猫が歩いている
たそがれの雪の道を
歩いている
自由詩
冬の終わりの雪の日に
Copyright
秋葉竹
2022-03-16 08:18:55