春の夜の優しい風
秋葉竹
星が滲む
冬の空にも愛はあり
優しい風が吹いています
爪を切りたいのは
切って尖らせたその先で
あなたのその柔らかな頰を
血の滲むまで愛してみたいから
そんな夢をみて
じぶんが嫌になった
天使のような顔をしたまま
孤独な人ね、と
指さすあなたのその
白くて細くて冷たい指に
見惚れて
しばらくすると
恋をしているんだと
気づいて
忘れられるなら
忘れたい
人にはいえない
禁断のヤツだから
まよなかに
ニセモノのくすりを飲んでみた
甘すぎたのでニセモノとわかった
だから
凍らせた
グラスにそそいだ缶ビールを
鋭い冷たい辛さを
喉で
ゴクリ
と
飲み干す
春の夜
脳はたちまちふにゃふにゃにされて
恋だけが至上と刷り込まれたみたい
なにものにも
触れられていない
いまだ蕾の白い花、
咲くまえのあなたのくちびるを
そっと人差し指で触れて
シ────ッ、
好き、はね、言葉にしちゃ
ダメなんです
自由詩
春の夜の優しい風
Copyright
秋葉竹
2022-02-21 21:08:01