今になってあんな夢をみるなんて
秋葉竹



彼女に逢いたくて
ずっと寝ていなくて

花丸はいちばん大事な夜にだけ咲かせて
いつまでも忘れない、あの冬休み

浮き雲の稜線をけっして見誤らず
綿飴みたいなんて言うのは我慢する
ぽっかり、ぽかぽか、なんて顔してるの?

蟋蟀の遺骸が転がっている家の庭
だからこそ夜が怖いので
ずれて世界と共生している

いつも眠たくてくだらないあんな風な夢をみる

湖のそばの小屋で育った

なにからも自由だったが不便な暮らし

読み飽きられた古本の階段
書きすてられた新しい刹那
そして抱かれなかった満月

真実の純粋な氷の世界を夢にみた

使い古された望郷のありきたりな夜

白い、青い、三日月が傾いて
慰めを歌ってくれている、光の子守唄

惹かれたのは天使たちが戯れる星空

どこへも行こうとしない

ことが幸せだと知っている知性は正しいね
泣きたいくらい、正しいね

世界の冬休みはすぐに過ぎ去って
僕は彼女にまた逢える












自由詩 今になってあんな夢をみるなんて Copyright 秋葉竹 2022-02-02 03:33:02
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