のんちむ
佐野ごんた

鎖がちぎれた
小さな金属の欠片を遺して
白い雲になれたのなら
本望なのだろう

スーパーマーケットになんて
来るんじゃなかった
どのコーナーに行っても
おまえが刺さる
サーモン
チョコレート
みかんゼリー

 (お忙しいところお集まりいただき
 (ありがとうございます
 (親しくしていただいた皆様に
 (かなしい想いをさせて
 (本当に身勝手な娘でございますが
 (のんちむは、のんちむなりに
 (深く悩み、いっぱい考えて
 (自身の最善の選択として
 (この道を選んだことと思いますので
 (どうか、赦してやってください


おまえの好きだったものを
カゴに入れてペダルをこぐ
雲。
雲が好きだった
強く、逃げるように

信号。
だめだよ、ぱぴお、あかだよ。
自転車を降りた
歪んだ光りは歪ませたまま

のんちむ
外は
のんちむでいっぱいだったよ

 (もっと何かできることがあったのでは
 (という想いは
 (みなさんの心のうちにもあると思いますが
 (過ぎたことを悔やんでも
 (何も生まれませんので
 (どうか前を向いてお歩きください


眩しい笑顔のピースサインを
額に貼り付けた
ちいさなのんちむを
ペンダントに収めた

 (のんちむ、おつかれさま
 (いままで、素敵な思い出を
 (ありがとう
 (たくさん、たくさん、
 (ありがとう


また、ぱぴおと散歩しようぜ
おまえの好きだった
高台の公園にいこう
夕焼けが、うまく撮れるといいのだけれど





自由詩 のんちむ Copyright 佐野ごんた 2022-01-11 08:21:01
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