フェイヴァリット
坂本瞳子

履き慣れないヒールを履いたりするから
まともに歩けなくなったりする
けれど今日はどうしても
この滅多に履かないお気に入りを
履きたかったからしょうがない
予想してはいなかった痛みに引きずらようとも
後悔などしていない
このヒールを履くことこそが
今宵のメインイベントだったから
このあとなにがどうなろうとも構わない
丁寧に磨き上げたこのヒールを
この足に纏って舞うような足取りで
夢見心地で街を闊歩する
それだけで十分
これこそが最高の瞬間
達成感の極みを味わって
いま、最高に輝いているのだから


自由詩 フェイヴァリット Copyright 坂本瞳子 2022-01-02 16:22:21
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