都度流失するものたち
ただのみきや


イメージの蕾の中にわたしはいた
わたしはわたしの真実をゆっくりと展開させていった
孔雀の眼差しを持つ蝶があなたの目蓋から飛び去った
わたしはなおもあなたのイメージの中にいたことだろう
あなたがあなたに施した魔術が冬の空気に薄められてゆく朝




朝の光が溢れかえり 
瞳はふたつの金の鈴
孕む音色を秘めたまま
燃える世界に溺れてゆく

車でどこまで走っても
息がわたしに付きまとう
わたしを鞴のように犯して
息はわたしを従属させる

風と鳥とに射貫かれて
悲哀の絃を震わせる
あばらを広げた鉄塔よ
蜃気楼の鏡にただ茫然と

しかし今やおまえは人
肉と情の血だるまに
針先ほどの一点の
ブラックホールは未だにあるか




風に跳ねる馬 血の滴る画用紙
わたしのマグマを弄ぶあなたの指先がなぜ焼かれないのか
固いものをつかもうとして溺れる手の行きつくところ
回帰する問の満ち欠けに塞がれた唇を柔らかくねじ開けるもの



                     《2021年12月5日》







自由詩 都度流失するものたち Copyright ただのみきや 2021-12-05 13:39:32縦
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