4.5
mizunomadoka


ヘリポートに出ると猫がいた
そこにいると危ないぞと言うと
あわてて逃げていく

空は高くて雲ひとつ見えない
洗浄機の栓を抜いて顔を洗う
管理者が椈の枝を落としている

ストレッチャーがやってくる
「彼の容態は?」
「わかりません」
点滴パックを持つ手は血で真っ赤だ

「この島にいる人間はきみだけだ」
「はい」
「助けは来ないかもしれないし
 来たとしても撃たれるかもしれない」
「わかってます」

なぜ?と訊いてみたかった
12年も苦労して身を隠してきたのに
どうして台無しにするのか
こんなつまらない男のために

西の森から
ローター音が近づいてくる
方向を偽っても周波数で軍用だと分かる

「逃げた方がいい」
「いいえ」
彼女はつま先を見てる
そこだけが異様に白い

しょうがない。守るしかない
自分はそういう役で生まれたのだ

彼女にダークを渡し
ガンマプラズマ銃を構えて
照準を合わせる

赤がチャージで緑がパルス






自由詩 4.5 Copyright mizunomadoka 2021-11-30 21:19:13
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