終章
Lucy

   

分厚い雨雲の真ん中が綻び
底なしの穴の遥か遠く
水色の空が薄氷越しに透かし見えると
遠い夕焼けが破れ目の縁を
なぞるように湿らせる

逝く人の
輪郭を切り取るだけの硝子窓

黄昏が重い緞帳のように降りてきて
地平線をすっかり塞ぐ少し前
カーテンコールのスポットライトが
僅かに残った木の葉の面で
ゆっくりと乱反射する

それ以外に何が起こるというのだろう
今更間に合わない反省をパレットの上で混ぜ合わせ
思い出を清らかな絵の具で塗り替えようとしたところで

綻びた雲と同じように
季節は境界を見失い
声を失い
逝ってしまった黄昏の裏側に
ぼんやり取り残されるのだ





自由詩 終章 Copyright Lucy 2021-11-22 20:01:40縦
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